親の家と同じ土地に家を建てようとしたら「分筆」が必要と言われた!
これは、一敷地に一建物という原則が建築基準法で定められているため、同じ敷地に2つの住宅を建てる事ができないのが理由です。
今回は、すでに住宅の建っている敷地へ、更に住宅を建てたい場合に必要な【分筆】や【分割】という手続きに関して紹介いたします。
どちらを選択するのか、慎重に判断する必要がありますので、ぜひ最後までご覧ください。
- 土地の分筆とは何か
- 土地の分筆と分割の違い
- 土地の分筆や分割のメリット・デメリット
- 土地の分筆や分割を行う場合の確認点・注意点
土地の分筆と分割の違い
分筆と分割は似たような言葉で、どちらも1つの敷地を分ける事を意味していますが、手続きや費用、権利など様々な違いがあります。
家を建てる時の状況や、将来を考えて、どちらを選ぶか決める必要があります。
分筆
分筆とは、登記上1つになっている土地に複数の住宅を建てたい場合に、土地を複数に分ける事を言います。
分けられた土地は全く別の登記となり、それぞれに所有者を定めることができます。
今回の例の様に、親の住宅が建っている土地に、更に住宅を建てたい場合だけでなく、相続された土地を複数の相続人で分けたい時や、元々複数の所有者がいる土地を、整理したい場合に行われる手続きです。
分筆を行い登記を行うためには、土地の境界を確定するため、測量や調査を行い、適切な申請をする必要があり、専門家への依頼が必要です。
分割
分割とは、1つの敷地を 2つにわける事です。
同じ敷地に住宅を2件立てることは建築基準法に違反してしまうため、設計者が任意のラインで敷地を分けますが、分筆と違い、登記簿上は1件となります。
測量や調査の必要は無く、役所への申請も不要です。
新しく住宅を建てる際はそれぞれの建物が建築基準法に適合している必要があり、条件によっては、元々建っていた住宅に建築基準法に合わせたリフォームを行わなければいけない可能性があります。
あくまでも登記上は1つの土地なため、分割した敷地のそれぞれで、所有者を分けることはできません。
土地の分筆と分割に必要な手続きや期間
土地の分筆と分割どちらの手続きを行うかによって費用や期間は変わります。
特に分筆の場合は、必要な手続きの有無によって、手続きにかかる期間は大きく異なります。
分筆
手続きにかかる期間
土地の分筆にかかる期間は、土地の境界線が定まっていない場合で2~3か月、測量の必要が無い場合は、10日程度で完了します。
必要な手続き
- 土地家屋調査士に調査・申請を依頼する
- 現地で確定測量を行い、敷地の境界を明確にする
※敷地に接する全ての所有者の立ち合いが必要 - 境界標を設置
- 登記書類の作成・申請
分筆にかかる費用
- 分筆登記のみ 5万円〜
- 境界が確定している場合 10~50万円程度
- 境界確定測量が必要な場合 50万円〜
分割
元々建っている住宅と、新しく建てる住宅のそれぞれが、建築基準法に適合している事が確実であれば、特別な申請や費用はかかりません。
設計士が任意のラインを設定し、土地を分割します。
分筆と分割のメリット・デメリット
分筆と分割はどちらも土地を2つに分けるといった意味では同じ方法にも思えますが、それぞれにメリット・デメリットがあります。
後から後悔しないためにも、しっかり見比べて適切な方法を選びましょう。
分割
メリット
- 面倒な調査や申請がいらない。
- 専門家への依頼費や申請の費用はかからない。
- 元から建っている住宅の水道メーターなどから分岐して使用できるため、インフラ設備の費用を抑えることができる。
デメリット
- 元から建っている住宅が現在の建築基準法に適合しなくなってしまう場合、行政からの適法指摘を受ける可能性がある。
- 新しく住宅を建てることで、元から立っている住宅が違法建築となってしまう場合は、建築を断られてしまう事があり、業者の選択枠が狭まる。
分筆
メリット
- 元ある住宅の建つ土地とは別物とみなされるため、分割と違い、元ある土地まで調査されることは無い。
- 分筆した土地は登記が別となるため、名義を分ける事ができ、ローンの担保など自由に活用ができる。
デメリット
- 専門家への依頼や手続きに費用がかかる。
- 調査から申請完了まで長いと4か月程度の期間がかかる。
- 敷地に接する土地の所有者から承諾が得られなかった場合分筆できない可能性がある。
- ガスや水道などのインフラ設備の設置に費用がかかる。
土地を分筆・分割する場合の確認点や注意点
法定相続人が複数いる場合は相続の際にトラブルになる場合も
分割を行い、親名義の土地に自分名義の住宅を建てても、相続の際、他の法定相続人に遺産の分割を主張されると、最悪の場合住宅を手放す事になる恐れがあります。
相続時にトラブルが予想される場合は、分筆を行い、住宅を建てる土地を自分名義にしておくと安心です。
分割を行っても、住宅ローンを利用する場合は土地全体を担保としなければいけない
新しく住宅を建てるために分割を行った土地でも、登記上1つの土地となっているため、ローンの担保は土地全体にかけられます。
万が一ローンの返済が出来なくなってしまった場合は、親の住宅が建つ部分も手放さなければいけなくなってしまいます。
また、すでに土地が他の担保となっている場合は住宅ローンを組めない可能性もあります。
分筆できない土地もある
- 分筆後の土地面積が0.01平方メートル未満
- 市街化調整区域など最低面積の規定から外れる
- 境界確認の際、隣地所有者と確認をとる事ができない
上記の場合、その土地を分筆する事はできません。
土地が分筆できない場合は分割を行って住宅を建てる必要があります。
土地の分筆方法によって節税対策になる可能性がある
土地を分筆する際に、どのように分筆を行うか、どの部分の贈与を受けるかによって、贈与税の負担が大きく変わる可能性があります。
贈与税の計算に使われる土地の評価額は、隣接している道路についている「土地を評価するための値段」をベースに計算されます。
角地など、隣接している道路が2本ある場合は値段の高い方を基準に計算されます。
例を見てみましょう。
分筆前の土地
角地で隣接している道路が2本あり、それぞれの値段が違う場合は、上記のような計算方法で土地の評価額が決められます。
この土地を絵の上下で分筆する場合
上半分の土地の評価額は61万5千円/㎡と変わりませんが、下半分の土地は評価額が50万円/㎡となります。
この場合、上の土地より下の土地の贈与を受けた方が税額が下がり、土地全体の評価額を下げる事もできます。
ここで注意点!
贈与税を下げる事を目的に、用途不明で合理性のない分筆を行ってしまうと、税務署から、2つの土地を1つとして評価されてしまい、分筆前の評価額で計算されてしまう恐れがあります。
住宅を建てる場合は将来を見据えた手続きを
土地の分筆や分割を行う場合は、費用や課税額だけで判断してしまうと、将来大きな損失に遭ってしまう事もあります。
住宅ローンを検討している方や、相続時にトラブルが起こる可能性が少しでもある場合は、土地を分筆し、新しく住宅をたてる土地の名義変更を行っておきましょう